やまゆり生活協同組合

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リレーコラム

DATE 2022.5.9

FROM 岸田美紀

第5回「甘いはうまい」

 このコラムのタイトルは「ごはんとおやつ」ですが、朝昼晩の食事は「ごはん」、そのあいだに食べるものが「おやつ」というのが一般的なイメージですね。しかも「おやつ」は「甘いもの」とい思われている方も多いことでしょう。      

「甘い」という言葉は、「あまし」が変化したものと言われています。当時甘いものの代表だった果実が熟すことを「熟む(うむ)」、「うまい」と表していたことから、「うまい(うまし)」が転じて「あまい(あまし)」になったということです。                                                      今も昔も甘いものは魅力的なのですね。

生物学的には、甘味はエネルギーになることを感じさせる味です。塩味はミネラルが含まれるという味。旨味は主にたんぱく質など体を作る要素を感じる味。酸味や苦味は毒が入っていたり腐っていたりする可能性もある味で、だから経験の浅い小さいこどもは苦手とするとも言われています。
一口に「甘い」と言ってもかなりの濃淡があり、お茶や水の甘さ、自然のままの野菜の微妙な甘さから、人工甘味料の歯に染みるような甘さまで、どれも「甘い」です。人間には生まれながらに備わっている味覚もありますが、育つ中で覚えていく味もあり、幼少期にはやはり微妙な、淡い甘さを味わうことが大切なのではないでしょうか。

今では甘いものといえば砂糖ですが、食べものとしてどうなのかというと、まず白砂糖には炭水化物(エネルギー)以外の栄養成分はありません。白砂糖は体内でブドウ糖に変化して脳の働きを瞬時に助けますが、とりすぎると脂肪に変わり蓄えられてしまいます。また、血糖値を急に上げるためインスリンが一気に分泌され、血糖値が下がると脳が空腹だと感じるという現象が起き、依存してしまうことがあります。

粗糖とも言われる含蜜糖は原料から抽出した糖汁を煮詰めて作るので、炭水化物以外にもナトリウムやカリウム、マグネシウムといったミネラルやビタミン類が残っています。血糖値の上がり方も少しゆるやかで白砂糖よりはベターですが、ほぼ9割が炭水化物であることを考えると、やはりたくさん食べるものではなさそうです。

砂糖の歴史を見ると、紀元前にはサトウキビを煮詰めて砂糖にする方法が発明されていたそうです。ただし限られた人しか食せない贅沢品で、その後も世界各地の植民地の奴隷労働によって生産されてきました。現代でも発展途上国の安価な労働力に依存しているという側面もあります。サトウキビは成長が早い分、土からの養分の収奪が多く、環境破壊の原因になっている地域もあります(そういう食べものは砂糖だけではないのですが)。

よく聞かれることですが、「砂糖を食べてはいけないのか」という問いについては、「砂糖は食べなくてもいいもの」「砂糖は食べ過ぎないほうがいいもの」では、とお答えしています。

特に、味を覚えていく過程の小さいお子さんには刺激が強すぎるもので、その中毒性も考えると、できるかぎり野菜や果物など自然の甘み、いろいろな味を感じるものをおすすめしたいですね。大人は、「心の栄養」と思って、ご自身の体調と砂糖の性質も了解の上でいただくなり、考えればよいのではないでしょうか。料理に砂糖を加える習慣のある方は、一度砂糖を抜いてみると、素材の味が感じられて発見があります。ぜひ試してみてください!


石垣もち
郷土料理として九州各地で作られているものですが、レシピとして紹介されているものはほとんどに砂糖が入っています。贅沢品の砂糖が伝統的に使われていたのかどうか、むしろ後で加えられたものではないのかなと思いますし、砂糖を入れない方が粉とさつまいもの甘みが感じられておいしいです。

<材料>
さつまいも 100g
小麦粉(中力粉で可) 100g
塩 小さじ1/4
<作り方>
①さつまいもは7~8mm角に切って分量の塩をまぶしておく。少しおくと水気が出てくるので、小麦粉と混ぜる。
②①に水50ccを少しずつ加えながら全体を混ぜて、水分をなじませながらまとめていく。
③6等分に分けて丸め、蒸気の上がった蒸篭で10~15分蒸す。

カテゴリー: 料理

岸田美紀

東京生まれ。1991年有機野菜宅配会社のスタッフとしてオーガニック流通の世界に入る。商品開発・カタログ制作など様々な仕事を行うかたわら、「生産者が想いを込めて作った野菜のおいしさをいかに伝えるか」を探求すべくマクロビオティック料理を学ぶ。その後、穀物菜食カフェのスタッフとしてにて、ケータリングシェフ、料理セミナー講師などを歴任。現在は「町でもできる自給自足的手づくり暮らし」をテーマに発酵食、保存食、マクロビオティックなどの講座を開催中。流通会社での経験を生かして、メーカー向けレシピ開発やコラム執筆なども手がける。